甘く熱いキスで
「軍部全体の実態、か……」
「目的は北の領地です。北には鉱山がありますから。ビーガー家との取り引きの本来の目的はそれでした。私を養子として引き取ったことは、その目くらましということもあります。すでにビーガー家の者は北側への潜入に成功しています。あちらの長に取り入って、傀儡政権を作るつもりです」

ライナーがそう言うと、ヴォルフは軽く頷いて隠し空間を閉じた。

おそらく、エルマーやヴォルフはベンノの動きに気づいていた。だが、きっかけがなくて家宅捜索や表立った告発ができなかっただけだ。王家があまり派手な動きをすると他の貴族たちからの反感を買いかねない。特にベンノのように裏で手を回している人間との探りあいは慎重に進めるべきだ。

「理由付けなど後からいくらでもできる。最初の目的が何であれ、お前のおかげでもう一度ファルケンの組織改革がきちんとできそうだ。ビーガー家の一件では、アイブリンガー……タオブンの方もあったからな」

フッとため息をついたヴォルフは顔を上げてライナーを見据えた。

「ライナー。お前はどうする?俺やフローラに対する負の感情を――」
「最初から、そんなものはなかったのです」

ヴォルフの言葉を遮って、ライナーは口を開いた。
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