甘く熱いキスで
残されたライナーとユリアは寄り添うように座り込み、しばらく呆然としていた。

こんなにあっさりと許してもらえるとは思っていなかったから……力が抜けてしまって動けない。

「ユリア」

しばらくそのまま放心状態でいると、ライナーに名を呼ばれてユリアはハッとする。腫れた頬が痛々しい。

ユリアが赤く滲む口元に触れると、ライナーは少し顔を歪めたが、すぐに微笑む。

「ヴォルフ様は、貴女をとても大切に想っていらっしゃるのですね」
「……うん」
「貴女を傷つけた私のことを許したくないお気持ちと、貴女の望むようにして差し上げたいというお気持ち……きちんと受け止めます」

ライナーはそう言ってユリアを引き寄せて抱きしめた。温かな体温は、ユリアを安心させる。

城を出ると言ったものの、結局祖父母に頼る形になるユリアが大人になるにはきっとまだまだ時間がかかるだろう。

それでも少しずつ、ライナーとお腹の子のために強くなる。そのための努力は惜しまない。そう、決意したのだから。
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