甘く熱いキスで
「キスして、ライナー」

少し潤んだ瞳でねだられて、ライナーは胸の高鳴りと同時にユリアに口付けた。少しばかり体温が高いのは、やはりユリアが無理をしている証拠……

「貴女はもう、キス魔の王女様ではなく……私の妻で、フィーネの母親ですよ?」
「……うん」

ユリアの髪を指で梳きながら、ライナーは少しだけユリアを咎めるような響きを含ませる。それは同時に、“無理をするな”という心配でもあるけれど。

「大人になりたいのなら……まずは“もん”と言わないことと、頬を膨らませる癖を直しましょうか」
「もう!」

冗談めかして言うと、ユリアはまた頬を膨らませてライナーの肩を叩いた。

「ご褒美はキスですよ?」

すると、ユリアは少しだけ眉をしかめてコクリと頷いた。

本当に……ユリアは可愛らしい。強引にライナーの心を攫っていったと思えば、こうやって子供っぽく甘えてくる。

今まで他人から頼られたり、甘えられたり……そんな経験のなかったライナーにとって、それはとてもくすぐったくて嬉しくて、つい甘やかしてしまう。5人兄弟の一番上の姉であるユリアも、誰かに甘えたいという欲求が強いのかもしれない。

ぷっくりと膨らんでいた頬が引っ込み、ライナーはユリアに唇を重ねる。何度か啄ばんでから、舌で小さな唇を割り開き、熱い口内をゆっくりと探った。
< 173 / 175 >

この作品をシェア

pagetop