甘く熱いキスで
「ユリア!何も知らない人と結婚するだなんて、自分の言っていることが――」
「フローラ。いいから」
「でもっ!」
「お前は、あのときと同じことを言っている。王子としての俺しか知らない、と……俺を拒んだ。だが、それから時間をかけて俺を教えてやっただろ?」

口角を上げてフローラに微笑みかけるヴォルフを見て、ユリアはヴォルフが反対しているわけではないのだと分析する。

「しかし、ライナー・カぺルは、元々――」
「イェニー。それは、お前が判断することではない」
「だからって、フローラの言う通り、ユリアは何も知らないだろー?」
「知らない、知らない、では始まらない」

イェニーとエルマーがヴォルフにそれぞれ意見する様子を見ていたユリアは緩みそうになる口に力を入れた。

分が悪いなんてとんでもない。ヴォルフという、たった1人の権力者がユリアの後ろ盾をしてくれるだけで、ユリアはライナーを城へ招くことが許される。

イェニーの苦い表情と、エルマーの呆れたように天井を見上げる姿、そしてフローラの不安げな瞳――自分を心配してくれる3人には少し申し訳ない気持ちにもなるけれど、やはり勝ってしまうのはわくわくする気持ちの方だ。

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