甘く熱いキスで
「こいつはお前のことが好きなわけじゃない。そんな奴と結婚なんて、政略結婚と変わらない!」
「たとえアルと結婚したってそれは同じことよ。何のしがらみもないから、ブレネン家という身分だから……身分や周りとの均衡を保つための結婚は、立派な政略結婚だわ」
「俺はユリアのことが好きだ!」
「私はアルのこと、男の人として見ていないわ!カイと同じ、弟だって何度も言っているでしょう!」

だんだんとヒートアップするアルフォンスとの言い争いは、普段ならばアルフォンスが引く形で終わるのに、今日のアルフォンスはどうしても引く気がないらしい。

「じゃあ、こいつはどうなんだよ?たまたまユリアとキスして、ちょっと気に入られて!そんなカぺル家にとって利益のある話を断るわけがない!こいつがお前を“王女”としてではなく、女として見てるとでも思ってるのか?」
「少なくともライナーは私の申し出を受けてくれたわ。ライナーが王女としての私と結婚したいのなら、これからうまくやればいい話よ。ライナーの真意を見抜けるかどうか、彼を振り向かせられるかどうかは私の問題なの。だから、これは、お互いにとってのチャンスであり、勝負なの」
「だったら、俺にだっ――!?」

うるさい――ユリアは言い争いが面倒になって、アルフォンスのシャツの襟を両手で思いきり引き寄せた。

背伸びをしたユリアの顔と、アルフォンスの驚きの表情が唇という場所で繋がろうとする……
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