甘く熱いキスで
感情のコントロールは昔から苦手だった――特に自分の思い通りにならないことがあると、よく癇癪を起こしてフローラを困らせていた小さな頃を思い出す。

あの頃は、行動に移すと言えば炎の気をまき散らすことくらいだった。周りはユリアのコントロールできていない気の熱さに困っていただろうけれど、今となればそれも可愛いものだ。なまじいろいろなことができるようになってしまった今は、考えなしというのは大問題である。

フローラやイェニーには、よく「あまり感情的になってはいけない」と言われているし、今朝もヴォルフに「はしゃぐな」と言われたばかりだった。

「では……火がつくのは、私とのキスだけにしていただけませんか?」
「え……?」

しばらくの沈黙の後に落とされたライナーの囁きに、ユリアは顔を上げた。ライナーの表情は、先ほどより柔らかく、ユリアの頬に手を添えて唇を指でなぞってくる。

「貴女は、私にプロポーズをしたのですよ?私も、一応という形にはなりましたが、それをお受けしました。他の男性に向かっていくエネルギーは……もういらないと思いますが」

触れるか触れないかの微妙な距離をゆっくりと左右に往復するライナーの指先に神経が集中する。

「それとも、私たちの運命を始める前に……“特別な”キスを確認しますか?」
「ぁ……」
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