甘く熱いキスで
「調べるのは、失礼かと思って……私がライナーときちんと会って話すようになったのは、ここ最近のことでしょ?それに、直接こうして話せるのだから、知りたいことは貴方に聞くわ」
「そう、ですか」

ライナーの空気がフッと和らぐ。それから頬を擽るように触れられて、ユリアは笑いを漏らした。

「では、私にも教えてください。どうして私をお選びになったのですか?それこそ、アルフォンス様がおっしゃるように、キスだけではわからないことがたくさんあると思いますけれど」
「それはわかっているわ。だからこうして貴方と会っているのよ。強いて言えば……お父様に似ているなって思ったの。だから惹かれたのかもしれないわ」
「ヴォルフ様に……?」

ライナーの指先がピクリとして動きを止める。ユリアが視線を上げると、ライナーは口を引き結んでユリアを見ていた。

また――ユリアと対峙するときの彼の瞳は鋭さを失わない。ヴォルフも目つきは鋭いし、それがライナーにとって普通なのかもしれないけれど、ユリアにこういう冷たい色を向ける人間は他にいない。

まだユリアはライナーに近づけていないと言われている気がして、少し落ち込む。

「現国王様に似ているなんて、畏れ多いですが……」
「もちろん、ライナーとお父様が違う人間だということはわかっているし、今はあまりそう思っていないわ。ただ、仮面舞踏会の日に会った貴方の第一印象が、少し細身だけれど背が高くてしっかりした人だったから、そう思っただけなの。キスも情熱的だった」

ハキハキとした喋り方や、自分の意思をきちんとユリアに対して言葉にできるところも良いと思っている。ユリアに言いなりになってしまうような“身分”の男性はお断りだ。
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