甘く熱いキスで
「ねぇ、ライナー。貴方は身分のことを気にしているようだけれど、そんなものは関係ないわ。私のお母様だって一般人だったのよ。それに、貴方はカぺル家の長男として、1人の軍人として、きっと厳しいマナー教育や訓練を乗り越えてきた……努力してきた人間でしょ?」

頬に触れているライナーの手が少し震えている気がして、ユリアは自分の手を添えた。ひやりとした感覚――ライナーの体温は、少し低めのようだ。

ユリアはこの男に火をつけることができるだろうか。

「貴方は、心の奥に炎を隠してしまっているみたいに見える」

ときどき垣間見えるライナーの炎は、ユリアを引き寄せるには十分すぎる温度で燃えている。訓練で走るライナーから滲み出るプライドと野心、キスをするときの強引な腕の熱。

ユリアはすでに、ライナーの情熱に囚われている。

「私……貴方の炎が欲しいわ」

大胆なことを言った気がしたけれど、それがユリアの本能だった。ライナーは少し口角を上げて笑い、ユリアの身体を引き寄せる。

ふわりと腕の中に閉じ込められて、ユリアは目を瞑り、ライナーの背中に手を回した。

「貴女は本当に変わった王女様ですね。ですが、男を煽るような発言は感心しません。その言葉の意味は、いくら大事に育てられた王女様と言え理解していらっしゃるでしょう?」
「ちゃんと、わかっているわ」
「本当に……?」

ライナーは艶色の混じった声をユリアの耳元で囁いた。それから、ライナーの大きな手がユリアの背中をゆっくりとなぞって首筋へと辿り着く。
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