甘く熱いキスで
指先で触れるか触れないかの微妙なタッチに、ユリアは少し笑いを漏らして身を捩った。すると、ライナーはユリアの身体の向きを変え、後ろから抱き込むような体勢をとった。

「ライ――んっ」

うなじに唇が押し付けられ、ユリアはビクッと首を竦める。ライナーの右手はユリアのお腹に回されてしっかり身体を抱き寄せ、左手の指がユリアの喉をツッと下った。そのままドレスから覗く素肌をなぞり、その下に窮屈そうに収まっている胸の膨らみを辿っていく。

「ぁ……ッ」

初めての刺激――ドレスの上、身体の線を首から辿っているだけなのに、ユリアはふわりと浮くような感覚に襲われた。同時に、じんわり痺れるようなそれに大げさな反応を示す身体に怖くもなる。

しかし、ライナーの手は動きを止めることなくお腹へと辿り着き、右手と交差させてユリアを抱き寄せた。

「怖いでしょう?身体を重ねるのは……キスよりも、触れるよりも、もっと本能的で刺激的な行為です。本来は神聖なそれは、ときに残酷なものにもなる」

知識はある。けれど、もちろん経験したことはない。ユリアは急に現実的になったそれに頬を染めた。

愛し合い、求め合って2人の新しい炎を灯す行為――仲睦まじい両親を見て育ってきたユリアにとって、未知の世界であるそれは、知らないことからくる不安や恐怖と共にとても神秘的なもので憧れでもあった。だが、ライナーの最後の表現はユリアの想像していた世界とは掛け離れている。
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