甘く熱いキスで

初めてのデート(1)

ユリアは鏡の前で唸りながら何着目かもわからないワンピースを放り投げた。桃色のレースワンピースは、先ほどからユリアが作り上げた洋服の山の天辺にふわりと舞い落ちる。

今日は、ライナーとの初めてのデートだ。夕方、城下町の国立劇場で待ち合わせて一緒にオペラを観ることになっている。

そのために着る服を選び始めて早一時間……一向に決まらない。

やはりドレスにした方が無難だろうか。いや、あまりフォーマルにしてしまうと目立ってしまう。芸術活動が盛んなフラメ王国ではオペラやコンサートはデートの定番であり、夫婦や恋人は比較的カジュアルな服装で観劇するものだ。

「やっぱり、白のワンピースかしら」

ユリアはこんもりとした山をかき分けて、白いフリルのワンピースを引っ張り出した。胸元に4段のフリル、スカートはひざ丈で上品なものだ。これに同じく白レースの靴を合わせて髪をまとめれば……少しは大人っぽく見えるだろうか。

元々、母親に似て上品な顔立ちのユリアはどちらかと言えば歳より少し上に見える。くっきり二重の瞳は少し大き目な気もするが、最近の城下町では目を大きく見せるメイクが流行っているらしいので良いことなのだろう。

ユリアはグッと鏡に顔を近づけて自分の長い茶色い髪を軽く手でまとめてみる。ライナーが更に大人びて見えるため、ユリアは隣に立つ自分を想像してできるだけシンプルな洋服を選ぼうと決めていた。

ユリアの好きなピンクやオレンジは少し子供っぽいし、黒や赤は単色だと妖艶すぎる。そうかと言って、カラフルな洋服はそれこそ一番下の妹が着るような幼さを醸し出してしまう。

「うん、これにするわ」

ユリアは早速着替えて隅に控えていた侍女を呼び、メイクとヘアセットをしてもらって鞄を肩に下げた。
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