甘く熱いキスで
「そんなの、ユリアが昨日遅くまで“運命の人”とほっつき歩いてたからだろ」
「ほっつき歩いていたわけじゃないわ。デートよ」
「それが気に入らないって言ってるんだ!なんであいつのための早起きはできて、俺の早朝訓練は見学できないんだ」

そんなものは運命と弟の重さの違いに決まっている。

「あいつだけじゃない。俺だって真面目に訓練してる。なのに、どうして俺はあいつと同じスタートラインに立てない?」

どうやらアルフォンスがユリアを訓練に連れてきた理由は、自分もライナーと同じ軍人だということをユリアに見せたかったからのようだ。

「ライナーはもっと……私をわくわくさせるわ」

ライナーの走りや呪文を使うときの真剣な顔、鋭く放たれる気に汗を拭う姿まで……何もかもがユリアの心を熱くする。

アルフォンスの技術や努力が劣るというわけではない。アルフォンスの修行はお互いが幼い頃から見てきたし、まだ男女の体格差や体力差が出る前は一緒に鍛錬したことだってある。そういう意味では、ユリアはライナーがどうやって今の技術を身につけたかよりもアルフォンスの努力を知っている。

でも、違うのだ。

何が違うと言われると説明するのが難しいけれど、ユリアの心を鷲掴みにするような鋭さがライナーにはある。あの涼しげな表情からは想像もつかないような熱がそこにあって、ユリアをどうしようもなく惹きつける。

「なら、俺とわくわくするようなことをすればいい」

ユリアの手をアルフォンスが握る。ユリアは顔を上げてアルフォンスを見た。赤みがかった瞳はいつになく真剣で、不覚にもうろたえてしまう。
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