甘く熱いキスで
ユリアがお皿をテーブルに置くと、コトンという音が響いて、それが合図のようにライナーは顔を上げた。

視線が交わってドキッとする。少しだけ見つめ合って、それからライナーが口を開いた。

「今まで……私を、“努力してきた”と言った人間はいませんでした。私を庇ったり、怒ったりする人間も」
「ライナー……」
「私のために泣く人間なんて、いなかった。貴女は……優しすぎる」

寂しそうに笑ったライナーに、ユリアの心が軋む。ユリアがどんな言葉をかけても、きっと同情にしかならない。それが、もどかしくて……

安っぽい慰めの言葉はかけたくない。けれど、ライナーを理解したい。また自分勝手な気持ちが先走る。そんな“感情的”な自分を閉じ込めるように、ユリアはギュッと目を瞑った。

「ユリア様」

すると、ライナーの手が頬に添えられて、ユリアは恐る恐る目を開けた。

ユリアを見つめるライナーの瞳にはほんの少しいつもよりも温かいものが混じっている気がして、ユリアはくすぐったくなった。鼓動が速くなる。

もっと、ライナーに歩み寄りたい。

「ライナー、私――」
「……2日後、ヴィエント王国へ行くことになりました」

“貴方をもっと知りたい”という言葉を遮り、ライナーが唐突に切り出す。

「予定では2週間ほどですが、状況次第では延びる可能性もあります」
「王家の招集の……?」

ユリアが問うと、ライナーは頷いた。
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