甘く熱いキスで

わがままに、デート

一週間後――ライナーがヴィエント王国へ派遣される前日。遠征の前日ということで休みのライナーに合わせてデートを計画したユリアは、城下町の待ち合わせ場所として有名な噴水の前に立っていた。

今日の服装は、ミントグリーンのレースワンピースを選んだ。前回のオペラデート同様、決めるまでに随分時間を費やしたが、落ち着いた色とチュールとレースの組み合わせが上品なワンピースだ。白いカーディガンを羽織って防寒も完璧である。

ヘアメイクをしてくれた侍女が合わせてくれたカチューシャは小さなリボンが右の耳元にあり、キラキラ光るビジューが散りばめられた可愛らしいもので気に入っている。

流行りのメイクに服、それに小さな肩掛けのバッグを持っているユリアは、同じように恋人を待っているだろう周りのそわそわした若者と変わらない、城下町の女の子だ。少なくとも一目でユリアに気づく者はほとんどいないだろう。

ユリアは緩む頬を両手で押さえ、目を閉じた。大きく息を吸って、その空気を吐き出しながら目をゆっくりと開ける。すると、ライナーがユリアに向かって歩いてくるのが見えて、ユリアは小さく手を振ってみる。白いシャツに黒のベスト、そして黒いスラックスが長い足を更に長く見せている。

ライナーはきちんとユリアに気づいて少し微笑んでくれた。

なんだかくすぐったい。

「すみません、お待たせしました」
「そんなに待っていないわ。さぁ、行きましょう」

ユリアはライナーの手を取って歩き出した。
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