甘く熱いキスで
靴を選び、レストランでの食事をしてから城下町の定番デートコースを一通り楽しんだ2人は、手を繋いでフラメ城の敷地内にある教会へと足を運んだ。

月明かりが赤いステンドグラス越しに降り注ぎ始める時間、ライナーにプロポーズをした日と同じ最前列で祭壇を見つめる。

「ライナー……今日、楽しかった?」
「えぇ、とても」

穏やかなライナーの口調は、本当にそう思っているようで、ユリアは安心する。

「靴、大切にしますね」

膝の上に置いた袋に触れて、ライナーがそう言ってくれる。ユリアはそれを見て、ギュッと胸が苦しくなって、ライナーの首にしがみつくようにして抱きついた。

ライナーが少し息を詰めたのが、耳元にかかる吐息の音でわかった。

「ライナー。貴方の気持ちは、この前ここに来たときから……少しでも変わった?」

距離を置きたいと言われたばかりでこんなことを聞くのは間違っているとわかっていても、止められない。ユリアはツンと鼻の奥を刺激する焦りを隠すようにライナーの首筋に顔を埋めた。

「私が急ぎ過ぎているの?私の気持ちは、変?こんな……こんなの、迷惑だってわかっているわ。でも、私……ライナーと離れるのが、寂しい」

離れたくない。

ライナーと出会ってからの短い時間は、まだお互いを知るには不十分で、それでも大きく膨らんでいくユリアの恋心は変なのかもしれない。
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