甘く熱いキスで
第三章:炎が爆ぜるとき

違和感

「ベンノじいさん、最近機嫌良いよなー」

早朝訓練を終えてアルフォンスが更衣室で着替えていると、徐にそんな会話が始まる。アルフォンスは、何気なく着替えるスピードを落としつつ聞き耳を立てた。

「精鋭部隊が久々の遠征任務だからな。ライナーにプレッシャー掛けて喜んでたぜ。性格悪いよな、あのじじいも」
「それもそうだけど、ユリア様がライナーにベタ惚れだからだろ?この前、デートしてたのをうちの親が見たらしい。城下町に最近オープンしたレストランに仲良く手を繋いで入っていったって」
「マジかよ?俺、結構本気でユリア様のこと狙ってたのに……」
「バカか、お前みたいな下っ端は無理だろ」

1人の兵士の突っ込みに、ドッと更衣室が湧く。ユリアを狙っていると言った本人も、冗談だったのかクスクスと笑っておどけてみせる。

「ライナーほどの下っ端はいないだろ」

すると、すでに着替えを終えた大柄な男が忌々しそうに顔を顰めて吐き捨てるように言った。
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