甘く熱いキスで
「おい」

城を出たところで部隊兵士の1人に方を掴まれ、ライナーは心の中でため息をついた。ここの人間は、本当に無駄なことが好きな連中だ。

「お話なら、呪文競技場で伺います。ここでは迷惑になるでしょう?」

そう言って歩き出すと、ライナーの後ろから舌打ちや嫌みが聞こえてきた。それでも自分の後を歩いてくる彼らは、よっぽどライナーが功績を立てたことが気に食わないらしい。

――「帰ってきたら、真っ先に会いにきて……」

どれくらいで彼らの腹の虫は収まるのだろう。そんなことを考えたのと同時に、彼女の一言が思い出されて……ライナーは右手の人差し指を握り込むように拳を作った。

感傷的になっている場合ではないのに……

運命を動かす決意なんて最初からしていたくせに、軍人になった理由を心に刻み直すなんて下手な言い訳で距離を置こうとした自分。ヴィエント王国での生活は、その決意を思い出すためには最適なものだったのに、フラメ王国に戻ってきた途端、ユリアのことで頭がいっぱいだ。

違う。本当は、ヴィエント王国にいたときも――

そこまで考えて、ライナーは首を微かに振って思考を断ち切り、ちょうど見えてきた呪文競技場の入り口へと足早に向かった。
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