甘く熱いキスで
ユリアが薄暗い通路を歩いていると、先に明かりが漏れているのが見えてホッと息をつく。あれは更衣室だろう。よく考えれば、遠征からの帰りで、武器や荷物などの片付けもあるはずだ。
「――よ!――――この――が、目障りなんだよ!」
だが、すぐに異変に気づいたユリアは息を潜めて更衣室へと近づいた。
少しだけ開いた扉から中を覗くと、ちょうどバキッと音がしてユリアはビクッと肩を跳ねさせる。
ユリアからは何人もの男の背中しか見えないが、少し視線を下げると彼らの足の間から奥で1人の兵士が倒れ込んでいるのが見えた。上半身を起こした彼の顔は見えないが、ユリアの視線の先の靴は見覚えがある。
そして立っていた兵士の1人が彼のそばに跪いて、軍服の胸倉を掴むとライナーの顔が見えた。
虚ろ、とは少し違うけれど、冷たくて何も映していない瞳が対峙する男を見つめている。
靴を見て出て行こうと思っていたのに、その表情を見たら身体が動かなくなってしまった。どうして何も言わずに、ただ彼らからぶつけられる負の感情を受け止めているのだろう。
どうして、何もかも諦めたような目をして……
「お前、自分の立場がわかってねーだろ。いくらカペルの名があったって、お前の母親は股を開くしか脳のないタオブンの汚ねぇ女だ。その上、父親はファルケンの品位を落としたビーガー家の奴だって言うのに、平気な顔で軍に居座りやがって」
男はそこまで言うとライナーの鳩尾に拳を思いきり入れ、ライナーが咳き込むのを目を細めて見る。それから乱暴にライナーを床に叩き付けると、今度は違う男がライナーの肩を踏みつけた。
「――よ!――――この――が、目障りなんだよ!」
だが、すぐに異変に気づいたユリアは息を潜めて更衣室へと近づいた。
少しだけ開いた扉から中を覗くと、ちょうどバキッと音がしてユリアはビクッと肩を跳ねさせる。
ユリアからは何人もの男の背中しか見えないが、少し視線を下げると彼らの足の間から奥で1人の兵士が倒れ込んでいるのが見えた。上半身を起こした彼の顔は見えないが、ユリアの視線の先の靴は見覚えがある。
そして立っていた兵士の1人が彼のそばに跪いて、軍服の胸倉を掴むとライナーの顔が見えた。
虚ろ、とは少し違うけれど、冷たくて何も映していない瞳が対峙する男を見つめている。
靴を見て出て行こうと思っていたのに、その表情を見たら身体が動かなくなってしまった。どうして何も言わずに、ただ彼らからぶつけられる負の感情を受け止めているのだろう。
どうして、何もかも諦めたような目をして……
「お前、自分の立場がわかってねーだろ。いくらカペルの名があったって、お前の母親は股を開くしか脳のないタオブンの汚ねぇ女だ。その上、父親はファルケンの品位を落としたビーガー家の奴だって言うのに、平気な顔で軍に居座りやがって」
男はそこまで言うとライナーの鳩尾に拳を思いきり入れ、ライナーが咳き込むのを目を細めて見る。それから乱暴にライナーを床に叩き付けると、今度は違う男がライナーの肩を踏みつけた。