甘く熱いキスで
「ユリア様に気に入られたからってへらへらしやがって、うぜぇなぁ。優秀で努力家の立派な軍人さん」
男が最後のくだりをユリアの声色を真似てか裏声を使ってそう言うと、更衣室にいた兵士たちがドッと笑う。
「こーんな靴まで買ってもらっちゃって……ユリア様のおかげで任務達成できましたーってか」
また違う男がライナーの足下に座り込み、靴を脱がせるとそれを観察するように手に乗せる。それからフッと息を吹き掛けて……靴に火をつけた。
「――っ!」
それを見た瞬間、ユリアの中で何かが弾け、今まで動かなかった身体が嘘のように扉を力任せに開け放った。
ガン、と鈍く響いた音。気が漏れたらしく、扉が砕けてノブの辺りから少し穴が空き、全体にヒビが入っている。
ライナーを囲んでいた男たちは突然の出来事に固まり、ただユリアを見つめている。ライナーは彼らの身体に隠れていて表情が見えなかった。
「どきなさい!」
ユリアが叫んだのと同時に炎が弾けて更衣室の温度が上がる。男たちは喉に引っかかったような声を上げて、ライナーから離れた。
すでに灰として散ったライナーの片方の靴を横目に、唇を噛み締める。言いたいことはたくさんあるのに、うまく言葉が出て来ない。
悔しい。こんな低俗な人間に、ライナーを蔑まれたことや、2人のデートで選んだ靴を燃やされたこと。
何より、それを黙って見ていたライナーや自分にも腹が立ち、悲しくて、身が引き裂かれてしまいそうな感情に支配される。
ユリアは小走りでライナーに近づいて彼の身体を起こし、立ち上がったライナーの手を引いた。
ライナーは何も言わずにユリアに引きずられてついてくる。
ユリアは燃える扉を視界に映したものの、それ以上に煮えたぎる感情を抑えられず、そのまま呪文競技場を後にした。
男が最後のくだりをユリアの声色を真似てか裏声を使ってそう言うと、更衣室にいた兵士たちがドッと笑う。
「こーんな靴まで買ってもらっちゃって……ユリア様のおかげで任務達成できましたーってか」
また違う男がライナーの足下に座り込み、靴を脱がせるとそれを観察するように手に乗せる。それからフッと息を吹き掛けて……靴に火をつけた。
「――っ!」
それを見た瞬間、ユリアの中で何かが弾け、今まで動かなかった身体が嘘のように扉を力任せに開け放った。
ガン、と鈍く響いた音。気が漏れたらしく、扉が砕けてノブの辺りから少し穴が空き、全体にヒビが入っている。
ライナーを囲んでいた男たちは突然の出来事に固まり、ただユリアを見つめている。ライナーは彼らの身体に隠れていて表情が見えなかった。
「どきなさい!」
ユリアが叫んだのと同時に炎が弾けて更衣室の温度が上がる。男たちは喉に引っかかったような声を上げて、ライナーから離れた。
すでに灰として散ったライナーの片方の靴を横目に、唇を噛み締める。言いたいことはたくさんあるのに、うまく言葉が出て来ない。
悔しい。こんな低俗な人間に、ライナーを蔑まれたことや、2人のデートで選んだ靴を燃やされたこと。
何より、それを黙って見ていたライナーや自分にも腹が立ち、悲しくて、身が引き裂かれてしまいそうな感情に支配される。
ユリアは小走りでライナーに近づいて彼の身体を起こし、立ち上がったライナーの手を引いた。
ライナーは何も言わずにユリアに引きずられてついてくる。
ユリアは燃える扉を視界に映したものの、それ以上に煮えたぎる感情を抑えられず、そのまま呪文競技場を後にした。