甘く熱いキスで
「マルクスはアイブリンガーの血を引く子供を利用しようとしてた。でもそれも、マルクスが陸軍のトップにいてこそ成り立つものだ。ベンノがライナーを養子にしたようにね」

ビーガー家は軍の第一線から降ろされたことで、前提であったファルケンからの支持を失った。子供の利用価値はそこで立ち消えてしまう。

しかし、長い間タオブンを牽引してきたユッテの父、ライナーの祖父にあたるヨーゼフ・アイブリンガーの存在は彼が亡くなった今も大きい。

シュトルツ信仰というある種の制約とヨーゼフの孫という立場が、表立ってライナーを批判することを憚らせ、タオブン側はカペル家に対して強く出られなくなるからだ。

「“大罪人の子供”――それが、ライナーが嫌われる一番の理由だよ。ファルケンなんか、特にプライドの高い連中だし、利用価値があると知っていても近づこうとはしなかった。何より、同じ時間だけ待たなくてはいけないなら、王家との繋がりを選ぶでしょ?ユリアにカイ、エリアス、ニーナ、それにミア。フローラとヴォルフの間には5人も子供ができたんだから」

ユリアには数え切れないほどの縁談が舞い込んできている。ライナーとの噂がある今も、それが途切れることはない。

下3人は少し年が離れているけれど、カイもあと少しで成人、18歳になる。第一王子――次期国王――の妻の座を狙う争いは必至だ。
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