甘く熱いキスで

未熟な想い

翌日。

いつものように昼食を持って呪文競技場へと足を運ぶと、ライナーの姿がなかった。他の精鋭部隊のメンバーは揃っているので、訓練が中止になったわけではなさそうだ。

すると、ユリアに気づいたリーダーが近づいてきて軽く頭を下げる。

「ライナーは謹慎中でしばらく城には来ません」
「謹慎……?どうして?」

ユリアの問いに、リーダーが言いにくそうに顔を顰め、チラリと視線を後ろで訓練の準備をしている者たちに向けてからため息とともに口を開いた。

「昨夜、更衣室で暴れたそうで……うちの隊員も何人か怪我をしましてね。せっかくヴィエント王国で結果を出したというのに」
「そんな!あれはライナーがやったんじゃないわ!あの人たちがライナーに乱暴していたから、私が怒って――」
「ユリア様、かばっていただかなくてもいいのです。全員がライナーの過失を証言しています。ライナーもこれで少しは懲りるでしょう」

その言葉に、ユリアは拳を握る。そして訓練の準備をしている部隊の者たちを見ると、ユリアに笑顔を向けてくる。

昨日、ライナーを囲んで楽しそうにしていたときと同じ嫌な笑顔だ。

「ユリア様は少しライナーに入れ込みすぎではありませんか?他の者への示しもつきませんし、ライナーもユリア様に気にかけていただいて舞い上がってしまったようですね。彼は今まで誰かに気にかけてもらうことがなかったですから……まったく、躾も行き届いていない者の扱いには、私も困ってい――」
「っ!ライナーはそんな人じゃないわ!」

ユリアは耐え切れなくなって昼食の入った籠を放り出し、一目散に駆け出した。

本当に、ライナーには1人も味方がいない。

精鋭部隊の全員がライナーを疎み、隊員たちに平等に接するべきリーダーの男まであんな風にライナーのことを言うなんて、信じられない。
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