緒方くんとあたし。
実際、家の整理をしながら、学校へ通い、先生のところへも通うのは思う以上に大変だった。
初めて、先生のお宅へ行った時、先生の奥さんの由希子さんが手放しで迎えてくれた。
「お父様のこと、辛かったでしょうね。でも、わたしはほんとに嬉しくて!うちに初めて女の子のお生徒さんが来るんだもの!うれしいわ!」
そう言って抱きしめてくれた。
由希子さんはダークブラウンの髪に緩くウェーブがかかったロングヘアをひとつにまとめて、きれいな顔立ちをくしゃっとほころばせて、おかあさんとは違った華やかさのある人だった。
「女の子って他にいないんですか?」
「う~ん、碁って、まだまだ女の子には受けが悪いみたいでね。うちのお弟子さんはみなさん、男の子ばかり」