緒方くんとあたし。
その日、先生のお宅に来た生徒さんたちに紹介された。
あたしの父が笹原大吾だということを知っているようで、父のことを聞きたい素振りを見せたりしていたけど、先生や由希子さんから言われているのだろう、極力避けているようだったのがよくわかった。
いきなりではそういうことも言えないけれど、いつかさらっと何もなかったように言うことができたらいいな、そう思った。
「家の整理とかもあって毎日来れるわけじゃないんですけど、よろしくお願いします。」
何でかしらないけれど、兄弟子さんたちにもえらくウケて、先生や由希子さんにも気に入ってもらえて幸先がいいかな、と少し期待したりもした。