Special Magic !
はあああ、これからどうしよう。
お腹すいたし。
ふわふわのベッドで寝たいし。
お風呂も入りたいし。
何にもない時に限って
いろいろと欲求が出るんだよねえ。
お金もないから
宿にも止まれないしさ。
……1週間。
1週間だよ?!
お金がなくてフラフラしてた期間!
もうっ!嫌だ!
ゆるゆるで不自由なく暮らしてきた
私にとってこれは拷問だよ!
ああっ!神様あっ!
もう無駄遣いしません!
調子のって「お釣りはいらないよ」なんて言いません!
かっこいいお兄さんに着いて行きません!
魔法をどや顔で披露しません!
アイドル気取りで広場で歌いません!
お風呂の中で歌います!
ああっ!かーみーさーまあああああ!
お願いしますううう!
「おや?」
ハッ!今の「おや?」は誰だ?!
や、やだ!
こんな姿を見られたくない!
あきらかに
「同情するなら金をくれ」って言う
女の子にしか見えないじゃん!
「大丈夫かい?」
し、しかも、声が!
声が優しくて安心するような…、
男の人の声ではないかっ!
ま、ますます恥ずかしい!
「おーい?大丈夫?」
「……ど、同情ずる、なら゙、金を、ぐれ」
……すごく声掠れた…。
やっぱり、馬鹿なことをするのはよくないね。
「…うん。あ、ああ、君さえ良ければ、ご馳走しようか?」
ご、ご飯?!
「い、いいい行きます行きます!ご飯!」
「そ、そっか」
「ご飯!ご飯!……飯っ!」
「……」
「飯っ!飯!飯!」
「……」
「飯だあっ!飯!め……し、」
「うえっ?!だ、大丈夫?!」
「……力、つきました」
ああ、力が出ない。
立てないよお。
だけど、神様は私を見捨ててはいなかった!
もしかしたら男の人が神様なのかもー
なんてね。
「うーん、ちょっと失礼するよ」
男の人はそう言うと人差し指と親指で
すりすりと擦り始めた。
どうしたのかな?
なんかの密室の謎でも解けたのかな?
暫くおとなしく見ていると、
パチンッと指を鳴らした。
「あっ」
ぐるん、なんて音が合うように
視界が見事に歪んだ。
これは私も体験したことがある。
自然と瞼が閉じた。
次、瞼を開けたとき
目の前に広がった光景は、
酒や料理の匂いが広がり
様々な種族の人達がどんちゃん騒いでいる
賑やかな酒場だった。