Ding or Ring
第一章: 重
だれ
ふと気がつくと、アキラは風呂に沈んでいた。
「ぐげェェッ! 」
奇声を発しながら浴槽の底を蹴りとばし、上半身を水中からひきずりだした。
荒い息を整え、深呼吸を繰り返す。
「ぶえッぐし!」
盛大なくしゃみが出た。
身体は芯まで冷え切っていた。
どうやら風呂の中で眠ってしまい、そのまま朝を迎えてしまったようだ。
アキラはぞっとした。
お湯はすっかり水に変わっている。
おそらく数時間は水風呂に浸かっていたことになる。
「寒い…」
アキラはがたがた震えながら浴室を出た。
夏ならまだしも、今は真冬だ。
気温は余裕で氷点下を下回る。
生きているのが不思議なくらいだ。
浴室を出るとそこは脱衣所 兼 洗面所になっている。
アキラはかじかんだ手でバスタオルを身体に巻きつけた。
そこで力が抜けた。身体が重い。
むしろ凍死寸前の条件にあって、今まで身体を動かせたのが奇跡だ。
救急車を呼ぼうか迷ったが、電話までの移動ができない。
そこでアキラは、冷え切った身体を心臓がフル稼働してあたためるまで、しゃがみこんでじっと待つことにした。
そのとき
何の前触れもなく、脱衣所の引き戸が開いた。