Ding or Ring
「えっ?」
「えっ?」
そこには、若い女が立っていた。
長い髪に、一目でルームウェアだとわかるだるだるのワンピースを着ている。
アキラより年上だろう。
手にはきれいにたたまれたタオルを持っていた。
たっぷり数十秒見つめ合い、女は絶叫し、アキラは失神した。
次に目を覚ましたとき、アキラは何重にも毛布にくるまれていた。
場所はさっきと同じ脱衣所のままだ。
「…起きたの?」
女がこちらの様子をうかがっている。
今は長い髪を一つ結びにしていた。
「お、お前誰だ⁈ どこから湧いてきた⁈」
「それは私の台詞だよ!」
女が近づいてくる。
手には男物の服を持っていた。
「あなたはここで倒れたの。重くて運べなかったから、ここで介抱したの。はいこれ着て」
きれいにたたまれた衣服を差し出され、アキラは自分が全裸だったのを思い出し赤面した。
素早く衣服を掴み取り、毛布の中に潜りこむ。
下着まであった。
「それ着たら早く出て行って」
「何言ってんだ、ここは俺ん家だ」
「私の家だよ。寝ぼけてるの?」
「はい?」
思わず毛布から顔を出す。
しかし、女は脱衣所から出ていったようだ。
「どうなってんだよ、まったく」
アキラは手早く服を着た。全て見覚えがある。
「この服俺のだ」
間違いない。バイトした金で自分が買った服だ。
アキラは毛布を見つめた。
これも俺のだ。
アパートの大家さんから押しつけられるようにしてもらったものだ。
はっきりと覚えている。
「何なんだあの女は⁈ 他人の家に勝手に上がり込んで」
アキラは居間に向かった。
そこで息を呑んだ。