守られるより守りたい!
拍手がやむと、先生が言った。
「じゃ、坂城。席着け」
「はい…、どこっすか?」
坂城君のその言葉に、皆は一番廊下側の列を見た。
〝転校生が座ってそうな席〟を見ると、そこには渡辺《Watanabe》君が座っていた。
視線を集めてしまった渡辺君は眼鏡の向こうの目を泳がせて落ち着かなさそうにしている。
そんな皆を見て、先生は変なテンションで言いだした。
「ふっふっふっふ…皆気付いていたか?空いていた、その席を!」
ビシッ!!と先生がその席を指さす。
でもその指はどう考えても、…あたしを指していた。
「え?え!?」
思わずそう声を出すと、先生ははぁーっとため息をついて
「神澤、お前じゃない。その後ろ」
と指先をちょいちょいと動かしながら言った。
はぁ、その後ろ…
ってその後ろ!?
「じゃ、坂城。今自分だと思っちゃった恥ずかしい神澤…ああ、あの今キョロキョロしてるショートカットのやつな。あれの後ろの席、ついてくれ。」
「…はぁ」
坂城君が、あたしに近づいてくる。
ええええええええええ!?
そんなこんなでええええええとしている内に、坂城君はあたしの横を通り過ぎて後ろの席に着いた。
「先生、なんでその席なんですか?」
ユカが手を控えめにあげながらそう聞く。
「だって神澤の次は坂城だろ。そんなその次が鈴木だろ。神澤と鈴木の間に坂城だろ。俺は出席番号に従っただけだ」
ふんっ!と偉そうに、自慢げにそういう先生を、皆がしらーっとした目で見た。