守られるより守りたい!
「もー、いいなぁ亜稀ちゃん!ずるいよぉ、坂城君の前の席なんてっ!」
「そっ、そんな事あたしに言わないでよ!先生のせいでしょ!?先生に言ってよー!」
「あのヘラヘラバカ茶髪、このまま調子くれてたらメッタメタにしてやんよ」
「ユカ恐い!恐いよユカ!キャラ違うよユカ!」
あのまま学活が終わり、休み時間、千春の席にて。
いきなりの状況に、ビックリしざるをえない。
なんで?なんであたしの後ろの席なわけ?
「え?ゆかりんも坂城君の近くがよかったの?」
「別にあたしは坂城なんて興味ないんだけどとにかくあのヘラヘラバカ茶髪にイラついてるの亜稀の気持ちも考えろって話だよ」
そこまで一息で言いきったユカはたぶん相当イラついているんだろう。
「え?え?亜稀ちゃん、坂城君の前、嫌なの?」
「え?………あー…いや、そゆんじゃないんだけど」
言っちゃったー、という顔をするユカに対して、あたしは「言ってもいいよね」という視線を送り、話し始めた。
「…あたし、小学校の頃さ、ちょっと嫌がらせ受けてて。それを助けてくれたのが、坂城君なんだよね」
「えーっ!?なにそれなにそれなにそれ、超かっこいいじゃん坂城君!いいなぁ亜稀ちゃ…」
千春がそこまで言いかけて、ふと口を閉じた。
ユカがはーっとため息をつく。
「え、えっと…、亜稀ちゃん、ごめん…」
本当にしょんぼりとしながら千春がそう言った。
あたしは訳が分からず「…え?え?」と首をかしげると、ユカがあたしの耳にコソッと言ってきた。
「…だからあたし、千春に言いたくなかったんだよね…。千春はきっとさ、坂城君がカッコイイって事に対してテンションあげちゃうから、亜稀に対して無神経な事言っちゃいそうだったから…」
ユカの言葉を聞いて、千春が謝っている理由が分かった。
さっき千春は、「いいなぁ亜稀ちゃん」と言いかけた。
それが失礼な言葉だと、自分で気づいたんだろう。
「別にいいよ、千春。それにユカも。気にしないで!今思えばちっちゃい嫌がらせだったし!」
あたしが笑ってそう言うと、千春が遠慮がちに、でも明るく、にぱっと笑った。