守られるより守りたい!
最後の日。
その日は、坂城君がこの学校に居る最後の日。
小学3年生の、修了式の日。
まだあたしは、坂城君に「ありがとう」を言えていなかった。
それを伝えたくて、坂城君のランドセルの残る教室で独り待っていた。
ガラガラ、と教室のドアが開く。
「うわっ、神澤」
残っていたあたしを見て、坂城君は驚いていた。
「どうしたの?帰らねーの?」
そんな坂城君の言葉を聞けるのも、もう最後かもしれない。
あたしは緊張していたけど、そう考えるとすんなりと言葉は出てきた。
「坂城君…、あの日、あたしを助けてくれてありがとう」
そう言うと坂城君は照れくさそうに頭をかいて
「別に、大した事じゃねぇよ」と言った。
そしてあたしに向かって
「神澤、俺、髪短いのも良いと…思う」
そう言った。
そう言い残した坂城君はランドセルを持って逃げるように教室を去った。
それがあたしと坂城君の最後の言葉だった。