守られるより守りたい!
#1
坂城君=ヒーロー。
季節は春。
暖かな空気の中を、風が優しく吹く。
そんな風が、あたしの短い髪を揺らした。
あの日以来、あたしはこの長さのままでいる。
坂城君のくれた最後の言葉を忘れられずに。
「亜稀ーっ!」
向こうから、あたしを呼ぶ声が振りかえる声がして振り返る。
声の方向からは友達が走ってくる。
「ユカーっ」
あたしも返すように友達の名を呼び、手を振った。
ユカはあたしの所まで着くと、ニッと笑って「さ、行こー!」とあたしの手を引いた。
ユカこと見倉 由佳里《Mikura Yukari》は、私の幼稚園の頃からの友達だ。
嫌がらせが終わった時、一番に「あたしがもっと早く助けてあげられなくてごめんね」と泣いて謝ってくれた、あたしの親友。
それ以来、前よりもずっと仲良くなれたと思う。
そして中学3年生になった今も、あたしの隣に居てくれる、大切な人だ。