新米教師"L"
「お、竜! あのな、艶野先生とカノンが付き合いだしたんだぜ!」

夜、寮で竜を見つけたエルは、駆け寄って話した。

ちなみにエルは超ド級の鈍感のため、カノンの様子を見ても
"何かいいことがあったんだな"くらいにしか思っておらず、
1Dの生徒に教えられて初めてその事実に気づいたのだった。

「へぇ、艶野先生と桜坂か…」

合わねぇな、と思いながら、一番気になっていたことを訊く。

「…お前は、気になる奴とか、いないのか」

なぜ自分がこんな事を気になっているのか解らぬまま、
その事を口に出す。

エルはキョトンとした顔をした。

そしてうーん、と考える素振りを見せた。

「いねぇなぁ…。
仕事が楽しすぎるからよ、そんな余裕ねーんだわ」

そう言うと、エルはにっと笑った。

その笑顔を見て、竜も思わず笑う。

「そう、か…」

エルの言葉に安心し、落ち込む複雑な自分。



竜は、少しずつ、少しずつ、自分の気持ちに気づき始めていたのだった。



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