新米教師"L"
寮では、休日、祝日は夜12時を門限とし、
一日自由時間として使って良いことになっている。

そんな貴重な日曜日、
カノンは、セイやフワと少し気まずくなっているため、
一人で街へ繰り出していた。

気晴らしのために、と散歩しているはずなのに、
頭に浮かんでくるのはこの前の3年生たちの事だった。

"蝶ちゃんと付き合っているのは俺だっつの…!!"

3年生が放った言葉がぐるぐると回る。

「…くっそ…っ! 胸くそ悪ぃな…」

寮に戻ろうと踵を返したとき、ある人物が目に入った。

「ツヤちゃ…っ!」

艶野は、私服で噴水の傍に立っていた。
見せつけるように髪を掻き上げ、通行人の注目を集めていた。

カノンが艶野に駆け寄ろうとしたとき、
一歩速く、違う男が艶野の肩を叩いた。

その男は長身で、かなりのイケメンだった。

「祐介(ゆうすけ)、遅いわよ?」

艶野は肩を叩いた祐介に美しい笑みを向け、一言二言会話した後、
腕を絡めて歩いていった。

「…っ!?」

カノンは驚きで硬直してしまったが、目の前の事実が信じられず、
真相を確かめようとこっそり尾行していった。
< 83 / 202 >

この作品をシェア

pagetop