僕は君の名前を呼ぶ


──コンコン


「俺だけど、入っていい?おかゆ持ってきたぞー」


返答がない。
寝てるのか?…ということは、俺が橘を起こさないといけない。

え、俺が!?

今置かれた状況を考えると、おかゆを乗せたおぼんを持つ手が震えそうになった。


「は、入るぞ」


必死に冷静を装う自分が滑稽に思えた。


ドアを開けると、橘は静かに寝息を立てて眠っていた。


寝ている姿はそれはそれは美しくて、つい起こすことも忘れてみとれてしまった。


胸が小さく上下するだけでそれ以外どこも動かない彼女を見ると時が止まったかと錯覚しそうになった。


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