僕は君の名前を呼ぶ
「ごめんって。もう笑わないから早く食って薬飲むぞ」
「はーい」
橘は機嫌を損ねたのか頬をプクッと膨らませた。
…かわいい。
「今度さ、料理教えてよ」
「おう。教えてやっから、早く風邪治せ」
橘は錠剤を飲み込むのが苦手らしく、薬を飲むのに苦戦していた。
必死に飲み込もうとしている姿がまたかわいい。
「じゃあ、隣の部屋にいるから何かあったらケータイ鳴らして」
「待って」
布団を掛けてあげてから部屋を出ようとしたところ、橘に手を軽くつままれた。
つまんだ橘の手が熱のせいで熱いのか、俺の手が橘につままれたせいで熱いのか、よくわからなかった。
あの日……橘に秘密を打ち明けられた日のことを思い出した。