僕は君の名前を呼ぶ
「行かないでっ…」
「俺はどうすればいい?」
「話を、聞いて欲しいの」
「…わかった」
まるで台本があるかのように、あの日と同じように進む会話に俺は少し怖くなった。
橘がつらいことを口にするんじゃないかって。
笑顔から遠ざかってしまうんじゃないかって。
そんな気持ちは押し殺して、俺は橘のそばに腰をおろした。
「どう、した?」
今の橘に話しかけるのに、こんなにも勇気が必要だなんて思いもしなかった。
胸がギュッと握られたような感覚がした。
「夢を見たの」
「…うん」