僕は君の名前を呼ぶ
線香花火
《じゃあお前、橘と祭りに行くのか!?》
電話の向こう側で隆太が叫んだ。キーンとノイズが響く。
「…隆太。うるさい」
夜、俺は隆太と電話をしていた。
隆太は時々俺に電話をかけてきて、橘との進展を聞いてくる。
自分の期待する進展になっていなければ、勝手に助言もしてくる。
ありがたいような、そうでもないような…。
《俺がお前を何回祭りに誘っても拒否したくせに、すげーな橘!恋のパワーは絶大だな!海斗はいつからそんなに積極的になったんだ?》
コップに注いだミネラルウォーターを一口含んでからベッドに寝転んだ。
「“恋のパワーは絶大”だからな。あー、どうしよ、今から緊張してきた!」
手汗で手からケータイがするりと落ちてしまいそうだ。
《祭りって8月の下旬だろ?1ヶ月も先なのに今から緊張してどーすんだよ》
「そうだけど…」