僕は君の名前を呼ぶ


《橘も惚れてくれるよ》と隆太はつけ足した。


…惚れるとか惚れられるとかじゃなくて、俺は橘に笑って欲しいんだけど。

隆太にその説明をしても無駄だと思った俺は、静かに言葉を飲み込んだ。


《俺はいかり肩で浴衣似合わないから海斗がうらやましい!桃子と釣り合わないー!》と隆太が嘆いている。


《俺も母ちゃんに着付けしてもらって桃子と落ち合うから》


「ああ。お母さんによろしく伝えてくれ」


《せっかくの祭りなんだから、楽しめよな!ちゃんと俺ん家来いよな!じゃあな!》


隆太は電話を切ってしまった。


「祭り、か…」


本当に、夏なんて終わらなければいいのに。


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