僕は君の名前を呼ぶ
君香る風に包まれて
温暖化のせいか桜が入学式よりかなり前に咲いてしまうのが、ここ数年は続いていた。
俺のときは運よく桜の満開と入学式がちょうど重なり、それらしい雰囲気で高校に入学することができた。
俺は桜が好きだったりする。
満開になるとたちまち花びらを落とすのに、散ることをためらわず毎年必ず咲く桜の儚さが好きなのだ。
俺の中に乙女チックなことを考えられる脳があることに笑える。
ちなみにこのことは恥ずかしくてまだ誰にも言ったことのない秘密だ。
入学式当日、俺はいつもよりかなり早く目覚めてしまった。
こういう日によくある特有のやつだ。自分では意識していなかったが、今思うと得体の知らない期待や不安があったのだろう。