僕は君の名前を呼ぶ
どちらが生み出したかもわからない、橘と俺の間にある見えない隔たりを感じたまま、近づきたくても近づけないジレンマに陥ってしまった。
一緒に撮った写真を添付したメールは下書きトレイに入ったまま。
勝手に現像した2枚の写真は、片方はフォトフレームに片方は引き出しの中に。
フレームの中には橘の笑顔が咲いているのに、今はそがむなしく感じる。
ちっぽけな壁のせいで何もかもがモノクロに映る。
でも、そのちっぽけな壁を壊せないのがもどかしい。
「バカじゃねーの」
「…は?」
こっちは真剣に悩んでいるというのに隆太は何なんだ!
「さっさと謝って仲直りしろ。それが一番近道だろ」
「そ、そーだけどさ、隆太もさっきの見ただろ?俺、橘にシカト決め込まれたんだけど」