僕は君の名前を呼ぶ
「俺、あのときからずっと彩花が好きなんだ」
「うん」
大好きだった人から初めて好きだと言われたのに、わたしの心の中は不思議なくらい落ち着いてた。
「俺とやり直して欲しい。俺と付き合って?」
中学生の頃のわたしなら、この言葉で胸がいっぱいになってもう死んでもいいと思えるくらい喜べたと思う。
でももうわたしは、あのときのわたしじゃない。
「ごめんなさい」
「…ん」
「夏樹くんのこと、ほんとに好きだったよ。夏樹くんはわたしの……初恋。迎えに来る遅いよ、遅すぎるよ。どんだけ遅刻してんのって話だよ…。でも、わたしは後悔しないよ」
わたしの初恋は、夏樹くん、あなたなんだよ。
一生で一度だけの初恋。
あの胸の痛みも、切なさも、全部大切な初恋の思い出。
わたしは、目の前にある初恋を思い出にするんだよ。