僕は君の名前を呼ぶ
「あのなぁ…」
これ以上言わせると大変なことになると思って顔をあげると、目に涙を溜めるカナ。
「えっ、ちょ…」
「ううん、大丈夫。海斗が隣にいるんだって思うと嬉しくて…」
「俺も…、カナにそう言ってもらえて嬉しいよ」
「えっ?」
カナは驚いた顔でこっちを見た。
「俺…、カナみたいに目立つキャラじゃないし、というかむしろ陰キャなのに。カナに何もしてやれなかったのにそれなのにそうやって…」
学校が空に浮かんでいるかと思えるくらいの浮かれた雰囲気の中、このときの俺たちの空気は異質だったと思う。
男の目の前で女が顔を真っ赤にして泣いてるし。
でも俺は、俺のために涙を流してくれていることが少し嬉しく思えた。