僕は君の名前を呼ぶ
あのときはカナの勢いに負けて付き合ったけど、俺のことをよく見てくれていたのに気づいてはいた。
心の片隅で橘を忘れられないでいて、それを見て見ぬふりをし続けてしまった。
…いつまで経ってもガキだな、俺。
「店出よっか」
静かに涙を流し続けるカナを、今度は俺が引っ張っていく。
熱気がこもる校舎を抜け、さっき橘と夏樹を見た渡り廊下へ。
本当は来たくなかったけど、カナの涙を落ち着かせるには最適だと思った。
ミスター・ミスコンテストで盛り上がってる特設ステージが遠くにぼんやりと見えた。
「カナってミスコン出ないの?」
空気を読めていない発言だとわかりつつカナの涙が止まった頃に、ずっと気になっていた疑問をぶつけてみた。
カナはお世辞なしに美人なのにミスコンにランクインしているところを見たことがなかったから。