僕は君の名前を呼ぶ
ひとりで歩いている夏樹に会った。
今一番会いたくない人物ナンバーワン…。
「あれ、橘は?」
「俺、もう帰るんだ。彩花なら教室まで送ったけど。あ、もしかして、俺と彩花が一緒にいるの見ちゃった系~?」
俺を冷やかすような目をしてニヒヒと笑ってくる。
…うざ。
「見ちゃ悪いかよ」
「いーや、どんどん見てくれ。どんどん嫉妬してくれ」
「夏樹くんは、俺を怒らすのがうまいんだな」
「え、何か言ったか?」
今のやりとりで、2、3キロは痩せた自信があるよ、俺。
「何でもねー。俺店番あるから教室戻るぞ」
「ねえ俺、道に迷ったからさ、昇降口まで案内してよ」
その場を去ろうとした俺の腕を掴み、夏樹がそれを阻止した。
「…ついてくれば?」