僕は君の名前を呼ぶ
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「あれ、海斗は?」
後夜祭が始まり、しばらく経っても姿を現さない青木。
それを心配したのか、誰かがそんな声を出した。
雨の中、青木がそうしてくれたように、今度はわたしが探さなきゃ。
行かなくちゃ。
「あっ、ちょっと彩花!?どこ行くのー?」
都の声が聞こえたけど、そんなの知らない。
文化祭の熱気の余韻が残る校舎。
汗がどんどん流れるし、息も切れる。
わたしはそんなのお構い無しに走った。
3年生の階に向かうと、わたしのクラスの教室に明かりがついてた。
もしかして、青木がいるの?
廊下の端にある教室を目掛けて無我夢中で駆け出した。
「…て……いの…」
「たけ…、好き…………から…」
かすかに漏れる男女の声。
片方は青木で、もう片方は…誰だろう。
嫌な汗が背中に伝ったのがわかった。
わたしは変に暴れる心臓を必死に抑えながらドアに手を掛けた。
【彩花 SIDE:END】