僕は君の名前を呼ぶ


──
─────


「あれ、海斗は?」


後夜祭が始まり、しばらく経っても姿を現さない青木。


それを心配したのか、誰かがそんな声を出した。


雨の中、青木がそうしてくれたように、今度はわたしが探さなきゃ。


行かなくちゃ。


「あっ、ちょっと彩花!?どこ行くのー?」


都の声が聞こえたけど、そんなの知らない。


文化祭の熱気の余韻が残る校舎。


汗がどんどん流れるし、息も切れる。

わたしはそんなのお構い無しに走った。


3年生の階に向かうと、わたしのクラスの教室に明かりがついてた。


もしかして、青木がいるの?


廊下の端にある教室を目掛けて無我夢中で駆け出した。


「…て……いの…」


「たけ…、好き…………から…」


かすかに漏れる男女の声。

片方は青木で、もう片方は…誰だろう。


嫌な汗が背中に伝ったのがわかった。


わたしは変に暴れる心臓を必死に抑えながらドアに手を掛けた。


【彩花 SIDE:END】


< 239 / 419 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop