僕は君の名前を呼ぶ
「ありがとう、後夜祭があるのに残ってくれて」
「いや、いいんだ」
文化祭が終わり、俺はカナと約束した通りに教室に残った。
誰もいない校舎はあまりに静かで、俺たちの声が響いていた。
「わたし、ずっと海斗のことが好きだったよ。また、前みたいに付き合って欲しいの」
「…ゴメン」
「うん、わかってた。海斗が誰かを一途に想い続けていたことなんて、わかってたよ。だってわたし、ずっと海斗のこと見てたんだもん」
「うん」
最初から最後まで、カナは優しかった。
「最後にひとつ。あのとき…付き合ってたとき、一瞬でもわたしのこと好きだった?」
「うん、好きだったと思う。好きじゃなかったら、付き合ってなかったよ」
「そっか、良かった、それが聞けて。自分の気持ちも言えて良かった」