僕は君の名前を呼ぶ
──ガラッ
突然ドアが開いたことに驚き、手の中の投影機を落としそうになった。
「た、橘…」
息を切らした橘がそこにいた。
状況が飲み込めない。
何で橘がここに?
「ち、ちょ、橘!?」
気づいたら、橘に手首を握られ引っ張られていた。
「海斗、行きなよ。わたしのことはいいから」
振り向くと、カナが少し泣きそうな顔をして言った。
「あ、ありがとうっ!」
なお俺の手首を握り強引に引っ張り歩き続ける橘。
普段なら、橘に触れられて体は過剰に反応しているところだけど、普通じゃない橘を見て俺はそれどころじゃなかった。
「クラスの人が探してたよ、青木のこと」
「ああ、ちょっと呼び出しされてて。ていうか、そっちは会場じゃない…」
「『ていうか』じゃないわよ。わたしの話終わってないっ」
「ご、ごめん」