僕は君の名前を呼ぶ
「繋いどく?」
「うんっ」
差しのべた手に橘のそれを重ねてくれた。
ドキドキが止まらない。
緊張してるの、伝わってなければいいけど…。
…いや、やっぱり伝わって、俺がいかに橘が好きなのかをわかってもらいたい。
「そういえば、さっきヘッドフォンしてたけど、何聞いてたの?」
「…引かない?」
「引くわけないじゃん!そんなヤバい曲聞いてたとか?」
「いや、ラブソング聞いてた…」
「………」
「ほら引いてんじゃん!」
泣きそうだよ、俺。
朝から大ダメージだよ、メンタルに。
「ううん、海斗くんもラブソング聞くんだなあって。誰の曲?」
「男4人組のバンドの少し前の曲なんだけど、映画の主題歌にもなってて…、知ってる?」
俺はウォークマンの再生画面を橘に見せた。
「Anachronism(アナクロニズム)じゃん! わたしこのバンド大好きだよ」