僕は君の名前を呼ぶ


夏樹の優しさが胸に染みた。


彩花ちゃんが夏樹に惚れた理由も今ならわかる気がする。


「良い男だな、夏樹」


「はァ!?俺はそっちの趣味ないわ!」


「…あ。」


「あ?」


夏樹がまた俺を威嚇するような反応をした。


「文化祭の前に告ったんなら、文化祭一緒にまわる必要なくない!?」


「あー…。最後の思い出作り?」


「何が『思い出作り?』だっ!面倒なことしやがって…」


あの光景を見てからの俺は、憤怒と嫉妬が心の中で渦巻いてひどい虚無感に襲われた。


そのせいで楽しいはずの文化祭が最悪な思い出になりかけてたんだからな。


彩花ちゃんが俺のことを図書室に引っ張ってくれていなかったら、この先の残りの高校生活、下手すれば今後の人生までもがどん底になるところだった。


「結果オーライだろ。俺が彩花にできなかったことを今度は海斗がしてやって」


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