僕は君の名前を呼ぶ
「ちょ、海斗くん!?」
周りの視線も、少し後ろへ抵抗する彩花ちゃんもすべてを無視して彩花ちゃんの手を引っ張り図書室に入った。
「遠くの大学に行くって、ほんと?」
「都から聞いたの…?」
「ああ」
「そっか…。このこと言ったら海斗くんはどんな反応するかなって考えたら、悪い方向にしか考えられなくて。悩んでたらこんなになっちゃった」
そう言って彼女は苦笑いした。
「…俺って、そんなに頼りないか?」
「えっ?」
動揺しているのか、目を合わせてくれない。
俺って、彩花ちゃんの彼氏なんじゃないのか?
俺は彩花ちゃんがこんなに好きなのに。
俺が『別れる』とか『嫌いになる』とか思うわけがないのに。
俺から彩花ちゃんを手離すわけないのに。
俺のこの気持ちはどうすれば伝わるんだ?