僕は君の名前を呼ぶ
「渡辺から、彩花ちゃんの中学生のころのこと聞いたから自分のことを話すのに敏感になってるのも知ってる。俺と付き合って間もないしダメダメだと思われてるのもわかってる」
「海斗く…」
「ずっと好きでいるのに、こんなことで別れたいとか思うわけないっ。彩花ちゃんの夢だから止める気もない。だからせめて、一番近くで夢を応援させてくれよ…!」
涙が出た。目から溢れてた。
彩花ちゃんに自分のことを言ってもらえなかったからじゃない。
頼りなく思われてるからじゃない。
俺の気持ちが伝わっていないことが不甲斐なくて泣けたんだ。
「海斗くん、ごめんね」
目の前が涙で霞んで彩花ちゃんの顔がよく見えなかった。
でも、声が震えていたのがわかった。
「彩花ちゃんが謝ることじゃないよ」