僕は君の名前を呼ぶ
「でもっ…」
「ちょっとだけ、こうさせて」
俺はそっと彩花ちゃんを抱きしめた。
背中に彩花ちゃんの腕がまわったのを感じて、やっと俺の気持ちが伝わったんだと思った。
「N県の大学を受験しようと思ってるの」
胸の中で静かに彩花ちゃんは言った。
「お母さんのお姉さんのところに下宿させてもらうの。おばさんもおじさんも、優しいの知ってるから一応安心だし…」
「ほんとは行くなって止めたいくらいだけど、彩花ちゃんの夢があるんだもんな。止めないかわりに…一番近くで応援させて欲しい」
「もちろんだよ。わたしも、海斗くんの夢、応援したいな。わたしが一番に“青木先生”って呼ぶの」
「………」
「もしかして…怒ってる?言わなかったの……」